シーン分析 & ロケ地探訪



美咲洋子、試験に合格し東京へ

〜スチュワーデスが高嶺の花だった時代〜






出発前のブリーフィング。昭和46年



「しょせん無理なんだ、こんな山の中から出てスチュワーデスになるなんて・・・」

と思っていた美咲洋子だったが、なんとスチュワーデスの試験に合格。

競争率が高いのは昭和も今も変わらないが

昔は良家の子女、お嬢様、モデルのような綺麗な女性から語学堪能の聡明な女性まで

スチュワーデス試験を受ける女性の"質"が高かった。

給料は高く、外国にも行け、嫁にいくにも引く手アマタ・・

ステイタスの高い職業には優秀な学生が集まってくるのは当然の成り行きである



昭和45年の番組放送時点で日本航空のスチュワーデスは約1300人。

受験者自体のレベルが高いうえに門も極端に狭い。

2007年現在、日本航空のスチュワーデスは約6000人、

採用人数も増えたかわりに受験者も増えており、競争率の高さは

数字的にあまり変化はないが、受験者の質には大きな変化がある。

現代の客室乗務員の試験の場合はこうだ。



例えて言えば、フォーミュラカーレース。

自然吸気 V10エンジン・3000cc・車重1300kg・・・

そんな規定を設けているにも関らず、レースに参戦して来る者は

排気量5000ccだったり、ターボエンジン搭載だったりと規定が守られていない。

そんなのはまだ良いほうで、F1レースと言ってるのにセダンやワゴンで参加したり

果てはママチャリや徒歩の選手まで現れる始末。

無駄に競争率が高くなっているだけのことである・・・

(スチュワーデスは高嶺の花?の項も参照頂きたい)



美咲洋子は佐賀の高校出身、

ライバルとなる同期生の香川妙子も東京出身で高卒という設定である。

当時は大卒、短大卒の女性は多くはない。進学率は20%前後の時代であるから

高卒で入社したスチュワーデスは多かった。



しかしながら日本航空はナショナルフラッグキャリアで人気企業、

美咲洋子も香川妙子も学校の成績は超優秀、

実家の佐嘉神社や香川外科病院はそれなりに有名で

二人とも実は良家の子女だったと理解すべき!?




美咲洋子(紀比呂子)と
同期生でライバルの香川妙子(皆川妙子)




高卒といえどもスチュワーデスとなれば高給取りだ

昭和46年、大卒男子の初任給が43000円だった時に

日航スチュワーデスの給料は80000円以上、

東亜国内航空のスチュワーデスでさえ70000円前後という高給であった。



現代に換算すると昭和46年の物価×4.5=平成の物価、ということなので

訓練が終わり飛び始めたばかりの新人スチュワーデスでも

月給は36万円を超えていたことになる

現代のキャビンアテンダントの場合、経費削減のために作られた子会社のCAに至っては

月給14万円前後という会社もあったりする・・・





第1回の放送、ド頭のシーンはこうだ。

  福岡から東京に向かって快調に飛ぶボーイング727。

  その中によもやと思ったスチュワーデスの試験に合格した一人の少女が乗っていた。

  その名は美咲洋子。18才である。

  九州・佐賀の山の町に育った美咲洋子の人生は今日を境に大きく変わろうとしている。

というナレーションが入り、オープニングタイトルとともに

「ATTENTION PLEASE!」のタイトルコール。










ボーイング727に乗る美咲洋子。

隣に座るオバサンにシートの動かし方、

飛行機がなぜ飛ぶかを聞かれてもサッパリわからない。そのうえ飛行機酔いまでしてしまう。

先輩スチュワーデスの仕事ぶりを見るにつけ、

私は本当にスチュワーデスになれるのかと美咲洋子の不安は大きくなる。

「田舎の少女」と「高嶺の花」を対照的に描くシーンである。




先輩スチュワーデスの仕事ぶりに感心する美咲洋子



昭和45年当時、飛行機はやっと庶民が乗れるくらいの運賃になった。

この頃の価格を比較してみると


 大阪ー東京 航空機  6800円

 大阪ー東京 新幹線  4100円


 福岡ー東京 航空機 14300円

 博多ー東京  特急  5800円



東京大阪線は鉄道との競争があったがために

何とか庶民でも飛行機に乗れる運賃になってきた。

しかし九州や北海道へ行くには飛行機の運賃はあまりに高く、

帰省や旅行、国内の長距離移動は国鉄の独壇場であった。



そんな中、18才の田舎の少女が飛行機に乗れたのは

航空会社が発行する社員向けタダチケットのおかげ。

これは「EF」と呼ばれる社員割引である。

試験に合格し東京に出てくる運賃は会社持ちなのは当然、

そしてプライベートな海外旅行で飛行機を利用しても無料である。



そんなこんなで東京に着いた美咲洋子。

電車を降り、寮への道に迷ってしまう一連のシーンは

東京・世田谷区砧の東宝撮影所近辺で撮影された。

最初の商店街を歩くシーンでは

後ろに番組スポンサーである不二家の看板もさりげなく写っていたりする。

そして更に後ろの路上には、101期生が箱根へ研修に行く際に乗っていたマイクロバスが・・・

これは明らかにロケバス。撮り直していないのはそんなことは当時は気にしなかったか、

それともハイペースの撮影でそんなことは気にしていられなかったのか・・・





 
各画像をクリック



これらのシーンでも田舎者という設定を全面に押し出している。

スチュワーデスは高嶺の花との前フリがあった後、

東京の雑踏、道に迷い、ついには路上にヘタれこむ。

この子、本当に「高嶺の花」のスチュワーデスになれるのだろうか。

少々おおげさな演出は職業根性ドラマの王道かもしれない。



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2007.6.3