スチュワーデスは高嶺の花?



その魅力と歴史

〜70年代のスチュワーデスと現代のCAを比較〜




JALの制服もミニスカに。キャッチコピーをご覧頂きたい
アメリカの影響を受けた広告である事が容易に想像出来る




スチュワーデスは航空会社の看板という広告戦略。

これにトドメの一発を決めたのは1971年のナショナル航空である。

テレビCMで水着姿の現役スッチーを出演させ、

「Hi!ジェニーよ。わたしと一緒にマイアミに飛んで。絶対満足させるわ。ナショナル航空よ」

なんていうお色気CMをシリーズ化。各社これに習い、同じようなセクシーCMが氾濫した。

当時のパシフィックサウスウエストのCMを見てもわかるように常にスチュワーデスが主役であった。

(動画-mpg 約15秒)



ミニスカブームとあいまって、スチュワーデス=セクシーな女性

というイメージは完全に定着する。

航空会社もスチュワーデスの魅力を全面に押し出し、この物凄い時代は数年続く。

各社ともスチュワーデスの美貌やセクシーさを売りにすることで

スチュワーデスのイメージは急激に変化。



美貌+知性+教養=高級感あふれる女性だったのが、いつのまにやら、

スチュワーデス=セクシー+軽い・・・というイメージに。

映画やテレビなどマスコミもスチュワーデスを面白おかしく扱った。

高級だったスチュワーデスのイメージは一気に落ち、軽い女の代名詞となった・・・

なんてことになってしまったのが1970年代前半のアメリカであった。






ユナイテッド航空の広告



しかしその後、大きなぶり返しがやって来た。

70年代初めから流行っていたウーマンリブ(女性解放運動)が活発化。

女性の権利を主張し、男女平等を訴える団体の活動が頂点に達する。

当然のごとくスチュワーデスは真っ先に男女差別のやり玉に上がってしまう。

「スチュワーデスは男性の性的対象ではない」という展開に。



カーター大統領の航空規制緩和と石油価格高騰がこれに追い打ちをかけた。

航空会社は低料金での顧客獲得競争へと転じる。

スチュワーデスを全面に押し出す宣伝は陰を潜め、

73年頃にはミニスカートブームが去ったこともあり、制服も一転、各社おとなしいデサインに。



あれだけ もてはやされたスチュワーデスもいつのまにか置き去りとなり

安さばかりを売り物にするエアラインが続々登場。

競争は強烈に激しく、倒産する会社、吸収される会社が続出。

航空会社が生き残るためには、まず人件費を削るのは当然の成り行きである。

レイオフ、解雇、ストなどが頻繁に行われ、スチュワーデスの給与水準はどんどん低くなっていく。



そうなると知性や美貌など関係なく、とにかく安くて体力第一。

給与水準の低下とともにスチュワーデスを志望する者のレベルも低下。

高級でステータスのある職業だったからこそ、知性や教養のある美人が

こぞってスチュワーデスを志望していたのであって

きつくて安く、ステータスも地に落ちてしまったスッチーという仕事をわざわざ選ぶ女性は少ない。

知性や教養を持ち、美人や容姿端麗である事は客室乗務員には まったく必要のない時代となってしまった。

豪華な旅の時代は昔のものとなり乗客も飛行機はただの移動手段と考える。

そしてスッチーに美貌や知性などを要求する客もいなくなった。



スチュワーデスの誕生が1930年、ミニスカでピークを迎えたのが1970年あたり、

1978年の航空規制緩和をきっかけにスッチーのレベルは急激に低下。

1980年代には多くの男性がスチュワーデスへの興味を急速に失っていった。



スチュワーデスに魅力を感じる理由。それは豪華な旅を演出するエアホステスの時代から

60年代後半のスチュワーデスを広告塔として使いイメージ戦略を計った時代まで、

長い年月に渡り、航空会社、広告代理店やマスコミが「スチュワーデスは魅力的な存在」

というイメージ作りを徹底してきたからに他ならない。

そしてそのイメージと魅力を破壊したのは当のマスコミでありアメリカの社会事情であった。


というのがアメリカのスチュワーデスの歴史である。



日本はアメリカのスッチー文化を追っているが30年は遅れているというところか・・・

アメリカのスッチー年表に例えると、マスコミや航空会社がスチュワーデスを

イメージ戦略のひとつとして使っていた1960年代後半から70年代前半に当てはまると言える。

スチュワーデス=高級、という時代で日本人のスチュワーデスへのイメージはストップしたまま。

しかし1994年に契約制が導入されてからはイメージと現実とのギャップは広がるばかり。



昔は他の人気企業を志望する子も客室乗務員の採用試験を受けていた。

現在「契約制スッチー」という職業は彼女たちの視野には入っていない。

昔は良家の子女から田舎の女の子まで多種多様。

アナウンサーかスッチーか、両方試験を受けるならず者もめずらしくなかった。

しかし今は違う。

この就職難の時代、どの企業にも受かりそうにもない子たちが

こぞってCA採用試験を受けにかかる。

CA志望者は上層の学生から下層のニート予備軍的学生にスイッチしつつあるのが現状だ。



スチュワーデスがいまだに もてはやされる理由、

これは根本的な文化の違いや島国である事から飛行機が特別視されてきた事情もあるだろう。

アメリカのような航空規制緩和は進まず、倒産が相次ぐような激しい運賃競争もない。

契約制スッチーの採用や航空会社の統合、新規参入の会社はあるものの

過去のアメリカのような航空業界の大改変は起きていない。



また日本のマスコミと日本の航空会社が未だにCAを広告塔として使い、

1970年代とまったく変わらない扱いをしていることも

スチュワーデスに関しての意識改革が進まない大きな要因である。


スッチーは将来的にアメリカと同じ道を辿るのか、それは何ともわからない。


しかし日本のスチュワーデスのレベルが昔と比較しあらゆる面で劣ってきているのは事実。

1970年代のスチュワーデスと現代のスチュワーデスは別物と言っても過言ではない・・・



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2006.4.18