2006年 フジテレビ「アテンション プリーズ」考


リメイク作品の難しさ

〜真のCA訓練生ドラマとは?〜





主役の上戸彩は茶髪、いくらドラマとはいえヒドすぎる

機上訓練では黒髪にしたようだが、厳しい規律があり女性の職場であるCAの世界では

訓練生が茶髪でいい加減な服装をすることなど現実的には絶対にあり得ないことである

日本航空を舞台にしキャビンアテンダントを描くドラマであるからこそ、

忠実に描くべき点があることを制作者は知ってもらいたい

ハチャメチャにするなら「やまとなでしこ」のように架空の会社を設定すべきだ



あり得ないほどの理想のCAを作り上げるのなら理解できるが

ひどい訓練生が入社、規律は守らずCAはお茶汲みだと叫ぶ

これでは日本航空にとって撮影協力する意味がないのではと疑う

JALらしからぬ、ひどいタイアップである



現在のドラマは約3か月くらいが普通

昔のドラマは半年や1年に渡って放送されるドラマが多かった

ドラマ全編の時間が短くなっているので細かい描写を飛ばすのは理解できる

しかしながら訓練の様子を飛ばしてしまっては職業根性ドラマとしても成立しない



"訓練"という目の前にそびえる高い山に訓練生たちが果たして登れるのか、

それが見所であって、目の前の山が高いんだか、低いんだか、

よく分からない状態では職業根性ドラマとしては盛り上がらないこと甚だしい

例えば、救命ボートを使用するシーン



オリジナルのアテンションプリーズでは教室内でボートを膨らませ、

装備品の確認作業をする。CAはそれをすべて知っていなければならず

保安要員としての大変さ、訓練の大変さをそれらのシーンで視聴者に

アピールする訳である



堀ちえみのスチュワーデス物語に至っては訓練所のプールで緊急脱出から

ボートの使用までの手順をほぼ完全な状態で見せる

ドジでノロマな松本千秋は失敗ばかり。何が正しい手順で、何が間違いか

という面も綿密に表現しているのは凄い

その上、実際に海に出て救命ボートに乗り、教官たちがホースで雨を降らせるという

本格的な訓練シーンをもみせる

目の前にそびえる山は険しい。そこを訓練生たちが涙しながら登っていく

ドラマは盛り上がって当然である



では新・アテンションプリーズはどうであったか

訓練所のプールで救命ボートを使用するシーン

主役の美咲洋子はプールで半ば遊びながら水泳をしている

訓練の苦労も何もあったものではない



訓練シーンは終始こんな調子で、あまりにサラっと流してしまっているので

CAの訓練って何?どんなんだったっけ?と記憶にも残らない

つまり訓練生たちが登るはずの険しい山が無いのである

いつまでも平坦な道、ほんの少しの坂道はあるが、後は恋愛ドラマでごまかしている



機体の整備ハンガーでのシーン

美咲洋子を取材にきたTV局のスタッフがハンガー内でボールペンを紛失する

整備士たちは作業を全て止め、全員でボールペンを必死に探す

エンジンの中などに紛れてしまったら事故につながるからだ

それを美咲洋子が見て整備士たちの苦労を知る



最終回、機上訓練中に急病人が発生するが美咲洋子や教官役のCAの

緊急措置により乗客は回復する。いずれも感動のシーンなのだが・・・



訓練生が涙しながら険しい山に登るのがアテンションプリーズであるのに

整備の苦労や機内の急病人処置などを描くシーンはどうでもいいこと。

そんなシーンに時間を裂くのであればもっと訓練の内容、

訓練生同士の人間関係を細かく描写しろと言いたい

急病人が発生するシーン。良いシーンではあるが前フリも少なすぎ、

最終回に至ってから険しい山が突然現れてもそれはあまりに遅過ぎる・・・



なんせ放送はたったの11回、

"安全運航"をアピールするシーンはオリジナルやスチュワーデス物語にも存在する

しかしそれは骨格となる訓練の部分をきちんと描いた上でのことで

それさえも出来ていない「新・アテンションプリーズ」は

そんな横道に逸れている時間はなかったはずだ

安全運航をアピールしたいのなら整備にスポットを当てるのではなく

訓練中のシーンで設定すべきであった

自覚の足りない美咲洋子に安全や仕事の重さを知らしめるためのシーンなのだろうが、

そもそも主役のキャラクター設定を誤るから余計なストーリーへと脱線していくのである



エキストラも少なすぎ、CAウォッチという楽しみもない

唯一、評価出来る点としては主役以外の訓練生たちが個性的で美人もいたりすること

無名に近い出演者が訓練生役をやると、成長ぶりに感情移入できる

しかし上戸彩のように、すでにキャラクターが決まっているタレントが

スッチー訓練生ドラマの主役だと感情移入するのが難しいのではないか。



紀比呂子も堀ちえみも少し売れてはいたが当時はスター級ではなかった

そのような面を考えた場合、新・アテンションプリーズの主役は新人俳優のほうが

まだ良かったのかもしれない

しかし視聴率を第一に考えるのがTV局、旧作の名前だけを使い、

上戸彩との組み合わせで視聴率のみを考えた駄作であったと思う



新・アテンションプリーズは「アテンションプリーズ」のリメイクではなく

まったく違うタイトルの新しいスッチードラマであったのなら

たいへん面白いドラマであったと評価したい

しかし「リメイク」と宣言をしている以上はオリジナルとの比較は避けられない



オリジナルのアテンションプリーズを

観たことがないという方々は この機会に是非ご覧頂きたい





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2006.7.1